渡り鳥保護条約編


 今日、彼は毒を塗った爪でほじられた。血清を取りに行った菊池君は今どこに?菊池君はそこから10mもしないところで溝に落ちていた。石鹸でないとこの臭いは落ちない。
「おまえのしゃぶしゃぶは本当のしゃぶしゃぶじゃない。」
 ショックだった。僕の家のしゃぶしゃぶは汁に味がついているのだ。なんかいろんなものがごちゃまぜになってる。お鍋のついでにお肉しゃぶしゃぶしちゃえ!そんな感じだ。いや、これはみそ汁と呼んだ方が正しい。大きいみそ汁だね。そういえば湯豆腐でもしゃぶしゃぶしたことがある。これはまだマシな方だね。
 タイムリミットまであと何分?菊池君は今、隣人のゴミの出し方に怒りを覚えている。
 コンビニに行く時間なんてないんだよ、菊池君。せめてそのお弁当は暖めないで。だから時間がないんだよ!のど飴買う時間なんてないんだよ。8粒入りでも10粒入りでもどっちでもいいじゃない。好きな味を選びなよ。
「10粒入りの方が得した気分になれる。けど、8粒入りのこっちの方がおいしそう。」
 菊池君にとって2粒の差は大きいらしい。
「なんだこの湯気は?」
 今度はコンビニ弁当から出る湯気に文句を言い出した。
「この湯気は、たわけだな。」
 どうやら湯気の出方がお気に召さないらしい。
「別にね、かぶらずしは嫌いじゃないんだ。けどね、まわりについてる、カルピス飲んだあとに出るタンみたいなのがいやなんだ。分かる?」
 菊池君はもう、完璧にピクニック気分だ。実は僕もピクニック気分。
 あんたは渡り鳥。かなりの渡り鳥。けどね、僕はもっと渡り鳥。そう、自由なのだ。僕らを束縛することはできない。冬を越すために行こう。血清はもういいじゃない。菊池君の言う本当のしゃぶしゃぶが食べられる、そんな感じのその地へ……。


ねぇ、血清は?