「チンチラマスクさん出番です」
チンキを塗りたくった膝を叩き、俺は控え室から出る。観客の喚声は止むことはない。チンチラマスクのテーマ、「レスラーキッス」が流れる中、俺は花道を歩く。
その時!対戦相手のノンシュガー佐藤が俺に襲い掛ってきた。佐藤の低空ドロップキックをまともに喰らった俺は、もう立てない。もっとチンキを塗らなくちゃ。
「チンチラをマスクにしてかぶるのはどうなんだろう」
これは俺のレスラー生活の15年間、ずっと疑問に抱いてきたこと。これを相談できる友は、まだいない。心の磨き粉はまだ使えない。
「今日、生中継だって」
「へー、そうなんだ」
佐藤は笑った。