夢工房編


 静かな車両内。流れる街の光。自己嫌悪に陥りながら、俺は豆乳を飲み干す。昔の友のこむら返りを思い出し、笑う。こんな平和な日々はいつまで続くのか……。
 隣の車両では米騒動が起きている。足を洗った俺には関係のないことだが、心の奥底ではドキドキパニック夢工場。あぁ、参加したい。俺も酢飯を握りたい。
「酢でいっぱいだぁ〜」
 そんな声を聞いたとたん、俺は走り出していた。
 駄目だ。行ってはいけない。俺は今までの自分を捨て、新しい自分を創るんだ。エミ子と新しい生命のために……。行ったら後悔する。一生後悔し続ける……。
 わさびのたっぷり入った寿司。具が透けて黄緑が見えるのに、横からはみ出てるのに、人はそれを食べてしまう。そして、鼻を押さえながら、涙目になりながらこう思う。
「やっぱ、食うんじゃなかったぁ〜」
 わさびに病みつき。後悔したはずなのに、君はまた手を伸ばす。
「それはそれでいいんじゃない?」
 そっか、それでいいのか。それなら、にぎにぎ。酢飯をにぎにぎ。


俺、うちわ係